シャーロック・ホームズ

唐突ですが、実は原作で描かれているシャーロック・ホームズ像と多くの人が持っているであろうシャーロック・ホームズ像って、結構違うと思うんですよ。一般のシャーロック・ホームズ像と言えば頭脳明晰な英国紳士の鑑といった感じだと思うのですが(後期ではそういうキャラになっていったので間違いとは言えませんが)、実際は結構エキセントリックで部屋は見るも無惨なくらい汚いし、喧嘩を吹っ掛けてきた相手を馬車で帰らなきゃならないくらいに叩きのめしちゃうようなところもあるんですよね。

そこでこの映画で描かれた「まったく新しいホームズ像」なのですが、確かに一般に広く知られていると思われるホームズ像からは大きく逸脱しながらも、完全な原作無視ではなくむしろ今まで拾われることが少なかったように思う面を集めたような印象を受けました。常によれよれの服と汚い格好とかお偉いさんにも平気で悪態をつくとかワイルドすぎる方向にアレンジされているきらいはありますが、「こんなのホームズじゃない!」ってくらいのものを見せるのかと思っていた私としては意外とまともだったなという感想です。ラストでアイリーネ・アドラーから没収したダイヤを、ワトスンが途中の乱闘で無くしたメアリーへの婚約指輪にするという原作っぽい粋なこともしていましたし。

ワトスンの方も、結婚を機に変人ホームズとの縁を切って平穏な生活を送る真人間に戻ろうと決意しているのに、結局ホームズに上手く乗せられて協力してしまったり心の奥では平穏な生活の退屈を恐れていたりそれをホームズに指摘されて怒ったりと面白いキャラクターになっていました。ていうかものすごいツンデレですよこのワトスン君は(笑) アクション面でも片足が悪いって設定はどこいったってくらい動いて(一応片足を引きずっている描写はありますが)、仕込みステッキでばっさばっさと悪党を斬り倒していきますし。原作で大きな欠点の一つと言われた、ギャンブル好き(しかもその割に強くない)という面が描かれていたのもニヤリです。

前面に押し出されていたアクションだけでなく推理面でも、今までオカルトと思われていた事柄がクライマックスでドミノ倒しのような怒涛の勢いで、今まで画面に出てきた証拠を基に解かれていくのは爽快でした。この時代に無線技術ってオーバーテクノロジーだろとか事前に解毒剤飲んで青酸ガスの被害を免れるとかできるのかよというのはまあ置いておいて(笑)

確かに「全く新しいホームズを描く」作品でしたが、原作への経緯や小ネタ拾いも忘れない面白い作品だったと思います。

最後に、袖に仕込んだ小型拳銃がやたらかっこよく、アイリーネ・アドラーを完全に屈服させて利用して、ブラックウッド卿もホームズも出し抜き全てを思い通りに進めたあのモリアーティ教授とは次回作で対決するんですよね! これだけ大物感たっぷりに描かれたモリアーティ教授も珍しいと思うので、是非ともアウトローでワイルドなホームズ&ワトスンとの対決を見てみたいです。