ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント

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ウルトラマンメビウスにて、賛否両論の「怪獣使いの遺産」、楽しいギャグ編だった「無敵のママ」、正直あまり印象に残らなかった「ひとりの楽園」の三話脚本を手がけた、小説家である朱川湊人が書いたウルトラマンメビウスの「小説」です。ノベライズというわけではなく、過去に父を宇宙人の攻撃で亡くしたことで宇宙人全てを憎む(ウルトラマンですら懐疑的に見ている)「ハルザキ・カナタ」というオリジナルキャラを軸に、いわゆるパラレルワールド的な話になっています。
まず読んで感じるのが、朱川湊人は「ウルトラマン」が本当に好きなんだなあということ。全編にウルトラシリーズを知っているならニヤリとすること必至の小ネタが散りばめられています。捻ったところでは、「宇宙ステーションアクセプターに、護衛艦サンダーグリッドとキンググリッド」なんてのも。
ただのオタクが喜ぶ小ネタだけの内容かといえばそうではなく(ウルトラシリーズを知っていることが大前提の内容ではありますが)、プロの小説家の作品だけに話としても十分に面白かったです。テレビでは結論に納得のいかなかった「怪獣使いの遺産」も、これならちゃんとあの「怪獣使いと少年」の続編として成り立っていると思いました。オリジナルの話もウルトラシリーズへのリスペクトが感じられ、「ああ、あれっぽい話だな」と思いつつもオリジナリティはしっかりある良質のものです。特に最終話である「幸福の王子」は、実にウルトラシリーズ+SFらしいセンス・オブ・ワンダーに溢れつつも、カナタの抱えたドラマにきちんと決着を付けた名エピソードでぐっときました。
今までありそうでなかった、「ウルトラマンが好きな大人」のための良質なウルトラマン小説です。「本編での朱川脚本ってイマイチだったしなー」とお思いの方も、ウルトラマンメビウスが好きなら是非とも手に取ってみてください。